私の車椅子は、今の私に合っていますか?
車椅子ユーザーとシーティング評価に関わる専門職のためのセルフチェックガイド
車椅子の選定やシーティング評価を経て、初めて自分の車椅子を受け取ったとき、
「やっと自分に合う車椅子に出会えた」
と感じた方も多いのではないでしょうか。
しかし、車椅子は一度選べば、その後ずっと同じように「自分に合い続ける」わけではありません。身体機能の変化、生活スタイルの変化、住環境や通勤・通学手段、活動量、外出先の環境などが変わるなかで、かつては適合していた車椅子が、少しずつ「今の自分には合いにくいもの」へと変化していくことがあります。
そして、多くの場合、その変化にはすぐには気づきにくいものです。
このブログでは、あらためて次の問いについて一緒に考えてみたいと思います。
今使っている車椅子は、今のあなたの生活を本当に支えていますか?
なぜ車椅子の適合を見直す必要があるのでしょうか?
車椅子ユーザーにとって、車椅子はしばしば「身体の一部」のような存在です。
座位姿勢、安定性、快適性、操作性に問題が生じると、単に「座りにくい」「動かしにくい」という不便さにとどまらず、長期的には次のような影響につながる可能性があります。
- 褥瘡リスクの増大
- 疲労や痛み、代償動作の出現
- 日常生活動作、就労・就学、外出、社会参加の制限
- 車椅子に対する安心感・信頼感の低下
- 外出や活動への意欲の低下
都市部の狭い通路や段差、スロープ、エレベーター、公共交通機関、屋外の路面環境など、日常的な移動環境は人それぞれ大きく異なります。
ここで大切なのは、車椅子が「まだ動くかどうか」だけではありません。
今の生活のなかで、
安全に、快適に、効率よく移動できているかどうか
を定期的に見直すことが重要です。
まず自分に聞いてみたい8つの質問
以下のサインがみられるからといって、必ずしも「車椅子が合っていない」と断定できるわけではありません。
ただし、適合やシーティングの見直しを検討するうえで、留意しておきたい重要なポイントです。
- 座っていると、発赤や皮膚トラブル、不快感、痛みが生じていませんか?
特に、以下の部位に注意して観察してみてください。
- 坐骨部
- 仙骨部・尾骨部
- 大転子部
- 背部
- 車椅子クッションがへたっていませんか?
- 体圧分散は十分に維持されていますか?
- 以前と比べて座面が硬く感じたり、沈み込み方が変化したりしていませんか?
また、次の点も併せて確認してみましょう。
✅ ポイント:
これらは、座位姿勢および体圧分散の再評価が必要となる、初期の重要なサインである場合があります。
- 座位姿勢が変化してきていませんか?
次のような変化はないでしょうか。
- 以前よりも身体が片側に傾きやすい
- 身体が前方へずり落ちやすくなった
- 手やアームサポート、周囲の物に頼らないと姿勢の保持が難しい
- 長時間、同一姿勢を維持することが困難になってきた
✅ おすすめ:
ご自宅で全身が映る鏡を利用したり、ご家族や介助者に正面・側面から姿勢の写真を撮影してもらったりすると、姿勢の変化に気づきやすくなります。
- 車椅子の操作が以前より大変、または不安に感じるようになっていませんか?
たとえば、次のようなことはないでしょうか。
- 自走式車椅子をこぐ動作が、以前より明らかに負担に感じる
- 駆動効率が低下したように感じる
- 電動車椅子の操作が「敏感すぎる」あるいは「反応が鈍い」と感じる
- 旋回、段差昇降、エレベーターの出入り、狭い場所の通過などの際に、不安が強くなってきた
✅ ポイント:
これは、必ずしも身体能力自体が低下したことを意味するわけではありません。
コントローラー設定、車椅子の調整状態、付属品の構成、座位姿勢などが、現在の状態に適合していない可能性も考えられます。
- 以前は一日座れていたのに、今は同じ時間座ることが難しくなっていませんか?
たとえば、次のような変化はないでしょうか。
- 以前は仕事や学校の時間を通して座っていられたが、今は難しい
- 半日外出しただけで、疲労や痛みが強くなる
- 座位で過ごしている途中に、休憩が必要になる回数が増えた
✅ ポイント:
座位耐久性が明らかに低下している場合、支持の方法、除圧のあり方、ポジショニング、車椅子の設定などを再検討する必要があるかもしれません。
- 体重や体型に大きな変化はありませんか?
次のような変化も、車椅子の適合に大きく影響します。
- 体重増加
- 体重減少
- 筋緊張の変化
- 体型や姿勢アライメントの変化
✅ ポイント:
これらの変化により、それまで適切だと考えられていた座幅や座奥行、背支持の高さ、クッションの種類などが、現在の身体には合わなくなっている可能性があります。
- 身体の状態や診断内容に変化はありませんか?
たとえば、次のような変化が考えられます。
- 痛みの部位や性質の変化
- 筋力、筋緊張、身体のコントロールの変化
- 疾患の進行
- 手術後やリハビリテーション経過中で、身体状態が変わっている
- 疲労度、痙縮、姿勢保持能力などの変化
✅ ポイント:
身体状況の変化は、必要とされる支持方法や車椅子設定に直接影響を及ぼすことがあります。
- 生活は変化しているのに、車椅子はそのままになっていませんか?
最近、次のような変化はなかったでしょうか。
- 職場や学校の環境が変わった
- 通勤・通学の機会や距離が増えた
- 新しい活動(趣味、サークル、ボランティアなど)に参加するようになった
- 屋外で過ごす時間を増やしたいと感じている
- 旅行や外出の機会が増えた
- 日常生活で、より自立して移動したいというニーズが高まっている

✅ ポイント:
もし車椅子が、「行きたい場所」や「やりたいこと」を制限し始めていると感じるなら、それは適合や設定を見直すべき重要なサインです。
- 車椅子の不具合を、我慢して使い続けていませんか?
見落とされやすいサインとして、次のようなものがあります。
- 以前にはなかった異音がする
- バッテリーの持ちが明らかに悪くなった
- ブレーキの効きが不安定になった
- タイヤの摩耗や滑りやすさが目立つ
- キャスターがぶれる
- 方向転換がしにくくなった
- 部品のゆるみやがたつきがある
- クッション、背支持、その他の付属品がずれやすい
- 担当の理学療法士・作業療法士・医師・看護師、あるいはシーティングに精通した専門職に相談する
- 福祉用具専門相談員や車椅子販売事業者に相談する
- 車椅子およびシーティングの再評価を依頼する
- 調整、点検、メンテナンスを受ける
- 痛み、姿勢の崩れ、疲労、皮膚の変化、操作しにくさなどを記録しておく
- どの部位に、どのような疲労や痛みを感じますか?
- 以前より難しくなった活動はありますか?
- 最近、避けるようになった場所や活動はありますか?
- 車椅子を使用していて、安全だと感じますか?
- もっと楽に、あるいは自立的に行えるようになりたいことはありますか?
✅ ポイント:
車椅子は、移動のための重要な福祉用具です。
「まだ使える」ことと、「安全で、快適で、現在の自分に適合している」ことは同じではありません。
車椅子は「壊れてから」見直すものではありません
多くの方は、多少の不便さや不快感があっても、
「まだ使えるから大丈夫」
「もう少し我慢しよう」
と考えがちです。
しかし、臨床的には次の点が非常に重要です。
✅ 定期的に適合状況を見直すこと
✅ 早期に調整・介入を行うこと
✅ 解決可能な小さな問題の段階で、痛みや皮膚トラブル、活動制限につながる前に対応すること
国や地域によって制度や支援体制は異なりますが、車椅子やシーティングの再評価が「自動的に」行われるとは限りません。ユーザー本人やご家族、支援者が「最近、少し前と違う」と感じた時点で相談することが大切です。
また、支給制度や買い替え時期、保証期間といった条件だけで判断するのではなく、身体状況や生活環境の変化に応じて見直す視点も重要です。
もしこの記事を読みながら、ひとつでも「当てはまるかもしれない」と感じる項目があれば、次のような行動を検討してみてください。
セラピスト・専門職の皆さまへ
車椅子評価は、単に「寸法が適合しているかどうか」を確認する作業にとどまりません。
ユーザーとともに、次の問いに向き合うことが重要です。
この車椅子は、今もなお、その人が望む生活を支え続けているでしょうか?
「まだ座れているかどうか」だけではなく、実際の生活場面でどのように車椅子が用いられているかを丁寧に聞き取ることで、本当に調整が必要なポイントが見えてくる場合があります。
例えば、次のような質問は有用です。
このような対話を通じて、姿勢、体圧分散、駆動方法、操作入力、環境条件、メンテナンス状況、生活目標の変化など、見直しが必要な要素がより明確になります。
最後に
すべての車椅子ユーザーには、快適に、安全に、自信を持って、効率的に移動する権利があります。
もし、今の車椅子が、かつてのように十分にはあなたを支えていないと感じても、それはあなたの責任ではありませんし、「失敗」でもありません。それは、現在の身体状況と生活に合わせて、車椅子やシーティングを見直すべきタイミングが来ていることを示す、大切なサインと言えます。
長い時間あなたを支えてきた車椅子も、あなた自身の変化に合わせて、調整や再評価が必要になることがあります。
今のあなたに最も適した移動手段・支援のあり方について、あらためて一緒に考えてみませんか。
著者

レイニー・ウーは、2020年3月にクリニカルエデュケーションスペシャリストとしてパーモビル中国に入社しました。台湾出身で、2012年に国立陽明大学を卒業し、物理療法および補助工学の学士号を取得しています。
レイニーは新北市補助器具センターで理学療法士として勤務し、政府給付の対象となる福祉用具の評価を行いました。また、高齢者や障がいのある方々に対して、バリアフリーな在宅環境の評価を実施し、在宅介護用福祉用具に関する提案も行っていました。同時期には、複数の特別支援学校において、理学療法のコンサルテーションを提供し、教育部の制度を通じて、支援を必要とする児童生徒への補助具選定にも携わりました。
2018年には上海へ渡り、民間クリニックにて足底評価、身体構造に関するコンサルテーション、スポーツ教育などを担当しました。中国におけるリハビリテーション業界の発展が加速するなか、補助工学分野での豊富な経験と情熱が、彼女をパーモビルでのキャリアへと導きました。