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移動だけではない支援:適切なタイミングで支援機器を活用し、DMDの子どもたちによりり多くの選択肢を

作成者: Rainy Wu|2026/09/07 1:47:50

毎年97日は「世界デュシェンヌ啓発デー」です。

2026年のテーマである「“Access Changes Lives”,(アクセスが人生を変える)」には、研究や治療の進歩だけでなく、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)のある方が、適切な情報、多職種によるケア、支援機器、利用しやすい環境、そして日常生活に参加する機会へアクセスできることが、よりよい変化につながるという思いが込められています。

DMDのある子どもにとって、支援機器は病状が進行してから初めて検討するものではありません。短下肢装具、シーティングサポート、車いす、電動座位変換機能、コミュニケーション機器、環境制御装置など、さまざまな支援は、エネルギーを温存し、機能を維持し、日々の活動への参加を支えるために役立ちます。

 

患を理解することで、本当に必要な支援が見えてくる

DMDは、筋細胞を保護する働きを持つタンパク質「ジストロフィン」の産生に関わるDMD遺伝子の変異によって起こる遺伝性疾患です。ジストロフィンが十分につくられないと、筋細胞が損傷しやすくなり、筋力や持久力が徐々に低下していきます。

成長に伴い、歩ける距離が短くなったり、疲れやすくなったりすることがあります。さらに、関節可動域の低下、拘縮、座位保持能力の変化、側弯などがみられる場合もあります。

DMDの影響は、歩行だけに限られません。心機能、呼吸、嚥下、骨の健康に影響することもあります。また、学習、注意、言語、行動発達に特徴がみられる子どももいます。

そのため、DMDのある子どもを支えるときには、「まだ歩けるかどうか」だけで判断することはできません。楽な姿勢で休めているか、呼吸しやすい姿勢を保てているか。学び、人と関わることができているか。そして、本人にとって大切な活動に使えるエネルギーが残っているか。こうした視点も大切です。

出典:Muscular Dystrophy Association. (n.d.). Duchenne muscular dystrophy (DMD) fact sheet

 

歩けなくなるまで、支援機器の導入を待つ必要はない

ご家族から、「まだ歩けるのに、車いすを使うのは早すぎませんか?」と尋ねられることがあります。

移動機器の必要性は、年齢や歩行の可否だけで決めるものではありません。むしろ、次のような点を確認することが大切です。

  • 疲れやすくなっていないか、転ぶことが増えていないか
  • 長い距離を移動した後も、授業、食事、遊びに使えるエネルギーが残っているか
  • 周囲についていけるか不安で、校外活動や家族での外出を避けていないか
  • 座っているときに前へずれたり、片側へ傾いたり、腕で身体を支えたりしていないか
  • 痛み、圧迫に関連する皮膚トラブル、移乗の難しさが生じ始めていないか

歩行が可能な子どもでも、学校や地域での移動、長時間の外出では車いすを活用できます。これは歩くことを諦めるという意味ではありません。限られたエネルギーを温存し、学ぶこと、遊ぶこと、人と過ごすことに使うための一つの方法です。

適切な移動機器は、子どもが自分で移動し、より遠くへ出かけ、活動に参加するためのもう一つの選択肢になります。

 

適切な支援が、エネルギーと自立を守る

DMDのある子どもにとって、適切な支援機器を選ぶことは、単に姿勢を整えたり、手動車いすと電動車いすのどちらかを選んだりすることではありません。エネルギー消費を抑え、快適さを保ち、自分で移動し、本人にとって大切な活動へ参加できるようにすることが目的です。

個別に調整されたクッション、バックサポート、その他のシーティング構成は、身体の安定、皮膚の保護、呼吸や上肢機能のサポートにつながり、時間とともに変化する姿勢にも対応できます。状況によっては、手動車いすが適していることもあります。一方で、車いすを駆動することで疲労が強くなったり、姿勢に影響が出たりする場合には、電動移動機器の検討も必要です。調整可能な電動座位変換機能は、姿勢変換、圧の再分散、疲労の軽減、周囲へのアクセスを支えることがあります。

手動車いすと電動車いすのどちらが一律に「優れている」ということはありません。より大切なのは、次の問いです。

今、そしてこれから先、子どもが望むこと、必要とすることを最も支えられる移動・シーティングの選択肢は何か? 

 

早めの準備は、不安を増やすためではない

DMDのある子どものニーズは、成長とともに変化します。早期には、関節可動域の維持、装具の活用、転倒予防が中心になることがあります。学齢期には、エネルギーの温存、姿勢のサポート、長距離移動への対応がより重要になります。思春期には、電動移動機器、シーティングとポジショニング、移乗、呼吸、日常生活について、より包括的な支援が必要になる場合があります。

先を見据えた準備は、車いすをいつ変更するか考えるだけではありません。ご家族と支援チームは、次のような点も一緒に検討する必要があります。

  • 自宅、学校、トイレ、よく訪れる場所は利用しやすい環境になっているか
  • 車いすをどこに保管し、どのように充電・整備するか
  • 通学や家族での外出時に、どのような移動手段を利用するか
  • スマートフォン、パソコン、日常生活で使う機器へどのようにアクセスするか
  • 教育、興味のある活動、社会生活、将来の就労への参加をどのように続けていくか
  • 本人は、どのような生活を望んでいるか

こうした話し合いに子ども本人も参加することで、自分のニーズを伝え、自分の生活について選択する機会が生まれます。支援機器は、介助者の負担を軽くすることだけを目的に提供されるものではありません。本人の目標と参加を支えるものであることが大切です。

近年のDMDケアでは、生涯を通じた積極的な評価、予防、計画が重視されており、リハビリテーションと支援機器も包括的な支援の一部として位置づけられています。

原著掲載図の出典:Birnkrant et al., “Diagnosis and management of Duchenne muscular dystrophy, part 3,” Lancet Neurology, 2018. 

 

支援機器で、子どもが望む生活を支える

支援機器の評価は、身体寸法、機器の機能、臨床的な要件の確認から始まるかもしれません。しかし最終的には、次の大切な問いに立ち戻る必要があります。

どこへ行きたいのか。誰と一緒にいたいのか。何をしたいのか。

適切な車いすは、子どもを場所から場所へ運ぶだけのものではありません。教室へ入り、友だちの近くへ移動し、手を使い、自分で行き先を選び、疲れたときには安全に休んだり姿勢を変えたりすることを支えます。

早めに計画することは、いつ特定の能力が失われるかを正確に予測することではありません。評価し、準備し、環境を整える時間があるうちに、子どもとご家族により多くの選択肢を残すことです。

 

支援機器は「諦め」ではなく、可能性を支えるもの

支援機器は、子どもを機器の中に閉じ込めるものではありません。エネルギー消費を抑え、より快適に、安全に過ごし、自分らしい選択に沿って生活へ参加する機会を広げるものです。

世界デュシェンヌ啓発デーにあたり、DMDがもたらす制限だけでなく、その先にある可能性にも目を向けたいと考えています。適切なケア、支援機器、利用しやすい環境へ必要なタイミングでアクセスできれば、子どもたちの生活には、より多くの可能性と未来への選択肢が広がります。